返戻付せんの「保険者による資格返戻」。これは審査ではなく、請求前に保険者が見つけた資格の不備です。
医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(10月1日に社会保険診療報酬支払基金から名称変更)の「オンラインによる請求前の資格確認に係る実施要領」が、令和8年10月1日施行で一部改定されました。名称変更を反映したもので、仕組み自体は変わっていません。この仕組みでは、提出した電子レセプトが保険者へ請求される前に保険者が資格を点検し、不備があればその処理月のうちに医療機関へ返戻されます。返戻付せんに「保険者による資格返戻」と印字されていれば、これに当たります。
オンライン請求を行っている保険医療機関・保険薬局・訪問看護ステーション。実施要領によれば、この仕組みに参加するのは電子レセプト(CSV情報)をオンライン請求システムで受領している保険者(公費負担医療の実施機関を除く)で、そこへ請求したレセプトが対象になります。資格確認端末や顔認証付きカードリーダーの設定を変える話ではありません。
期限について医療機関側に申込みも提出期限もありません。この仕組みを利用するかどうかは保険者が決め、申出書も保険者が機構へ提出します。運用の日程は月ごとに決まっており、機構が公表している令和8年度の日程表では、10月請求分は資格情報ファイルの配信開始が令和8年10月15日(木)、保険者からの返戻情報ファイルの返信締切が10月22日(木)、結果情報ファイルの配信が11月6日(金)です。返戻されたレセプトの再請求期限については、この実施要領に記載がないため、通常の返戻レセプトの取扱いに従います。個別の確認が必要です。
どういう仕組みか
実施要領の「目的」には、こう書かれています。保険医療機関等から請求された電子レセプトについて、機構から保険者に請求する前に、オンライン請求システムにより、患者氏名、保険者番号、記号・番号および請求点数等の情報(資格情報)を提供し、当該保険者において受給者資格の点検を実施していただく。その結果、受給資格の不備が確認された場合には、該当レセプトを当該処理月において保険医療機関等へ返戻する、と。ねらいは2つ挙げられています。保険者と保険医療機関等の双方で、被保険者資格の点検をめぐる事務処理の負担を減らすこと。そして、いったん診療報酬と事務費を支払ってから数か月後に再審査等調整で精算する、という事態を防ぐことです。実施要領そのものは平成23年10月1日の施行で、今回の一部改定は令和8年10月1日施行。10月1日に社会保険診療報酬支払基金が医療情報基盤・診療報酬審査支払機構へ名称変更したことを反映した改定で、医療機関側の手続きが増えたわけではありません。
返戻付せんに印字される文言
実施要領には、請求前の資格確認により保険医療機関等へ返戻するレセプトについて、保険者による資格確認により返戻となったことを明確にするため、返戻付せんに「保険者による資格返戻」の文言および保険者が返戻情報ファイルに記録した返戻理由等を印字する、と書かれています。つまりこの文言が付いている返戻は、診療内容を審査で問われたものではなく、資格の情報が合わなかったものです。理由の欄には、保険者が記録した内容がそのまま出ます。実務でよくあるのは、転職や退職で保険者が変わっていた、受付の控えが以前の記号・番号のままだった、氏名の表記が保険者の記録と違っていた、といったところです。対応としては、患者さんの現在の資格を確認し直し、正しい情報で再請求する流れになります。なお、この種の返戻は、受付でマイナ保険証によるオンライン資格確認を通していれば、その時点の最新の資格情報が取れるため起きにくくなります。
返戻されないケースも決まっています
保険者から返戻の情報が送られても、返戻にならず「請求どおり」として保険者へ請求されるものが、実施要領に列挙されています。返戻情報の資格喪失年月が診療年月以降(診療年月と同一の場合を含む)のもの、証回収年月が診療年月以降のもの、給付期間満了年月が診療年月以降のもの、機構が配信した資格情報ファイルと保険者が送った返戻情報ファイルの保険者番号・診療年月・氏名等が一致しないもの、などです。かみくだくと、診療した月の時点では資格があったと分かるものは返戻されない、ということです。もう一つ歯止めがあります。資格情報ファイルに記録されたレセプト件数に対して、返戻情報ファイルに記録された件数が一定の割合(10%)を超える場合には、送信誤りを防ぐため、保険者が送信する際に確認メッセージが表示される、と定められています。
月の流れと、窓口でできること
運用の日程は月ごとに決まっています。保険者が返戻情報ファイルを送信できるのは15日から当該処理月の送信締切日までで、締切日は月によって違います。結果情報ファイルの配信日は原則8日です。機構が公表している令和8年度の日程表では、10月請求分は資格情報ファイルの配信開始が10月15日(木)、返戻情報ファイルの返信締切が10月22日(木)、結果情報ファイルの配信が11月6日(金)となっています。医療機関から見ると、10月に請求したレセプトのうち資格に不備があったものは、11月のはじめごろに返戻として戻ってくる、という見当になります。窓口でできる予防は2つです。1つは、受付でマイナ保険証による資格確認を通すこと。もう1つは、何らかの事情で資格確認ができなかった方について、どの時点の資格情報で請求するかを院内で決めて共有しておくことです。返戻の内容の読み取りや再請求の進め方で迷うときは、まずレセコンの保守事業者にご確認ください。あわせて、アイジェイネットでもご相談を承っています。
出典・確認元
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構:オンラインによる請求前の資格確認に係る実施要領(令和8年10月。令和8年10月1日施行の一部改定) ↗
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構:オンラインによる請求前の資格確認日程(令和8年度) ↗
情報は確認日時点の内容です。最新の対象製品・手順・条件はリンク先でご確認ください。
編集方針・訂正について自分の環境について相談する ↗
